受験生のための健康食
日本生薬学会幹事
中国長春中医学院名誉教授
薬学博士
林 輝明
 受験シーズンを迎え、ご家庭では受験生の健康管理にいろいろと工夫をこらしておられることでしょう。今回は受験期の食物について考えてみたいと思います。
 受験生のように頭を酷使する人は、頭に充分な栄養と新鮮な酸素をつねに補給し、老廃物を除いて疲れをとることが必要です。この運送の役割を血液が担っています。ですから「頭の血のめぐりの悪い人」であってはならないのです。血行を促進し食欲を増進させる食物としては、ショウガ、サンショウ、シソ、ニンニク、シイタケなどが挙げられます。これらは、含まれる精油や含硫アミノ酸の働きで効果を発揮します。また、同じ作用をもつビタミンEを多量に含む小麦胚芽、豆類、クルミ、レバー類も役立つ食物です。
 しかし、最もお勧めしたいのは大豆製品です。大豆の中には大豆サポニンという成分が入っており、この成分は血液中の過剰のコレステロール、中性脂肪を除去し、過酸化脂質の生成を抑えて血液粘度を下げ、血液循環を促進してくれます。この過酸化脂質というのは、過剰に酸化され過ぎた油脂類のことで、肉類や魚類の長期保存によって生成します。そして動脈硬化の最大の引金となって、体の老化を早めるとともに、コレステロールや脂肪類の血液への溶解を促進し、血液をドローとさせて血行を悪くさせます。大豆サポニンは、含まれるビタミンEと共にこの害を防いでくれるのです。それだけではありません。大豆中に含まれるレシチンは、頭の栄養素として、私たちの脳の細胞を作っている主成分の一つで、脳細胞に活力を与え脳の老化を防ぐ健脳物質として最近アメリカで注目を浴びています。大豆以外では、タマゴの黄身やレバー類に多く含まれています。
 また受験期には、体力をつけるために良質蛋白質の補給がぜひ必要です。この面でも大豆は畑の牛肉といわれるように33%前後の蛋白質を含み、牛肉の含有量18〜22%を遥かに上回っています。しかし注意が必要なのは、煮豆、炒り豆で食べるときわめて消化吸収が悪く、栄養分の62%前後しか吸収されません。しかし納豆や高野豆腐などの加工食品で食べると90%以上吸収されるようになるのです。特に高野豆腐は、豆腐の10倍以上の栄養価をもち、蛋白質は牛肉の2倍以上の50%も含まれており、受験生にぜひ食べてほしい食物の一つです。
 過酸化脂質を防ぐ食物には緑茶があります。お茶の渋味成分のエピカテキンというタンニンはビタミンEの50倍の強さの抗酸化力をもち過酸化脂質の生成を抑え、血流を良くして頭の老化を防いでくれます。しかも含まれるカフェインは、軽く大脳を興奮させて、頭の疲れをとってくれるので、休み時間はジュース類より緑茶を愛飲してください。
 さらに朝鮮人参も服用をお勧めしたいものの一つです。朝鮮人参には疲労回復作用があり、頭に行く血管の内頚動脈を拡げて、脳への血流量を増して栄養補給を促進すると共に、体の蛋白質合成能力を高めて、体力を増強してくれるからです。これらの働きは人参中のギンゼノサイドと呼ばれる成分群が活性化することが判っています。これらの有効成分は、また神経を鎮めてイライラを解消して、ストレスをとり、記憶力を増進させて、学習能力を高める健脳作用のあることが、東京大学や中国の北京中医学院などの研究で明らかにされ、受験生だけではなく、老人痴呆の改善にも注目されています。 目の疲れを治すことも受験生にとってぜひ必要です。これには、食用菊、山芋、鯉のレバー、拘杞(クコ)の実などが役立ちます。食用菊は二杯酢につけたり、天ぷらにすると苦みをとることができます。鯉のレバーは漢方で鯉胆(リタン)と名づけられ、眼精疲労の特効薬です。普通のレバーと同じ調理法で役立ててください。その他ビタミンAを多く含む卵黄、うなぎ、豚・鶏のレバー、人参、南瓜、ホウレン草もよい食物です。 体の疲労回復にはビタミン類の多い食物、ことにBを多く含む食物の摂取が必要です。それには、小麦胚芽、胡麻、グリンピース、海藻類、ウナギ、タラコなどがあります。そして、そのビタミンBの体内での吸収を促進し、疲労回復を早める食物としては、タマネギ、ニンニク、ニラなどが挙げられます。ことにタマネギは神経を鎮め、栄養のバランスのとれた高カロリー食で、受験生向きの食物です。そして忘れてはならないのは冬の味覚牡蛎(カキ)です。カキは海のミルクといわれるように栄養の宝庫です。特にグリコーゲンを多量に含みます。受験の短時間に、一年間の用意した全知力を注ぎ込むには、大変な瞬発力のエネルギーが必要です。短時間の瞬発力を作り出すのはグリコーゲンなのです。この体へのグリコーゲンの補給にはカキが一番です。受験前夜の食事には、カキがお勧めです。
 もとより疲労回復には、食物だけではなく、適切な睡眠が必要であることも忘れてはなりません。


 
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