キノコと木の実の効用 その1
日本生薬学会幹事
中国長春中医学院名誉教授
薬学博士
林 輝明
- シイタケ、マツタケ -

 北から南までのびる日本列島は、さまざまな樹林層に恵まれ、 森に一歩足を踏み入れると多種多様の形や色彩をもったキノコ類を見出すことができます。 日本には、確認されたキノコだけでも千種近くが分布しているといわれます。

 その中でもシイタケは、椎の木に多く発生するので椎茸の名がついたといわれ、 ブナ、クスノキ、カシ、クリといった広葉樹の倒木や切り株に、春秋の雨の多いときに出現します。 この発生時期によって、春子、夏子、秋子、冬子と呼ばれ、中でも寒中にできる冬子は肉が厚く、冬茹(どんこ)と名づけられて最良品とされます。 しかし、香りが最も高いのは、秋子なのです。 中国では、椎茸を香蕈(こうしん)と呼んで貴重品扱いし、鎌倉時代から江戸時代の終わりまで、日本から中国への重要な輸出品のひとつになっていました。
 椎茸は昔から血行を良くし、冷え症を改善し、動脈硬化や高血圧、胆石を予防改善してくれる食物として、東洋医学で利用してきました。 そして、1965年に椎茸の中からエリタデニンという硫黄を含むアミノ酸が取り出され、この成分が血液中の過剰のコレステロールを強力に取り除いて、粘った血液をサラサラさせ血行を促進することが判り、これらの効果が科学的に裏付けされたのです。
 さらにレンチナンという粘液多糖成分を多く含み、これが体の免疫力を高めて癌細胞の拡がりを抑制し、癌の予防と改善に役立つ食物であることが、国立癌センターの研究で証明されています。 加えて紫外線に当たるとビタミンD2に変わるエルゴステリンという成分を多量に含有しています。 ビタミンD2は、体に吸収されにくいカルシウムの大腸からの吸収率を高めるとともに、体内でカルシウムが骨や歯にしっかり沈着するのを助けます。 そしてくる病や骨粗鬆症の発生を防ぎ、子供の成長を促進してくれます。エルゴステロールは日光に当たらなければ、この大切なビタミンD2に変わりませんから、椎茸は必ず20分でも日光に当てて食べるようにしてください。

 マツタケは、主として赤松の根に発育し、まだ人工栽培に成功しておらず、庶民の手のとどかない高価な食物になっています。 ところが栄養の点からみると、水分を90%近く含み、蛋白質約2%、糖質7%、脂質約0.6%と値段に比べて決して良質の食物とはいえません。 しかし特有の秋の香気を漂わせ、著しく食欲を促進してくれる点では、やはり秋の王者といえましょう。 この香りは、高級アルコールのオクタノールと桂皮酸メチルが混ざり合ってもたらさせるもので、特有の味はグアニル酸が主体になっています。 味がいちばん良いのは傘のひらかぬもので、香りの良いのは傘の開きかけのもので、八分開きのものが最高とされます。 そして傘の開ききったものは、味も香りも落ちます。松茸も血中の脱コレステロール作用を持ち、中国では松蕈(しょうしん)と呼んで、産前産後の手足の冷えや顔色の改善、長期下痢の回復に用いています。

 
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