砂糖の功罪
日本生薬学会幹事
中国長春中医学院名誉教授
薬学博士
林 輝明
- 咳と咽喉痛を鎮める食物 -
 砂糖は塩と並んで食生活にかかすことのできない調味の両横綱です。
 砂糖は、イネ科のサトウキビやアカザ科のサトウダイコンから作られ、日本への渡来は 「天平の甍」で有名な唐僧鑑真が、紀元754年に奈良朝の孝謙天皇に献じたのが最初と いわれています。
 そして室町時代の後期になって、ポルトガル人の手で砂糖は貿易品として輸入されるよう になりました。しかし、当時は大変な貴重品でした。
 又、上流階級だけの希有品でした。
 こうした砂糖も江戸末期にやっと一般に使われるようになりましたが、 それは黒砂糖でし た。

 
 本格的に我が国に精糖業が根付き白砂糖が出廻るようになったのは、明治後期以降の事です。砂糖は最近は悪者扱いばかりされていますが、良い面も沢山もっています。
 まず砂糖には水分を抱え込む保水性があって、皮膚や粘膜の乾燥を防ぎ、炎症を鎮める作用を持ちます。
 又、細菌やカビの発育を抑えこむ静菌作用もあるので、口中の粘膜の乾燥を防ぎ、喉の痛みを和らげ、咳止めのシロップ剤や口唇の荒れを治す薬として使われます。
 砂糖を同量の水に加熱して溶かし、寒さで口唇がひび割れした時にお塗りになると下手な薬より良く効きます。
 また肌に潤いをもたせ、肌荒れを改善する化粧品としての働きもあります。

 砂糖はブドウ糖と果糖の結合体ですが、澱粉などの糖の結合と違って、体内で簡単にその結合が切れて容易に消化吸収されるので、手早いエネルギー源として、登山などの重労働の後の疲労回復に役立ちます。甘いものをとると疲れが早くとれるのはこの為です。しかし、大量摂取すると胃粘膜を刺激し発酵分解して胃腸の働きを悪くします。又、体のカルシウムをとって、骨や歯を脆くすると共に、歯の間に残った砂糖が口中の細菌で発酵分解し、歯の表面を被っているエナメル質を溶かす酸に変わり、虫歯の大きな原因になります。
 また、砂糖が糖尿病を悪化させることはよく知られていますが、動脈硬化を著しく促進することも忘れてはなりません。
 今から26年前金沢大学医学部で、ウサギに、通常の餌に30%の砂糖を混ぜて6ケ月間摂取させる実験が行われました。
 その結果、実験に使用したウサギ全部の足の裏に黒々と穴があいてしまいました。これは、足の裏に栄養を運んでいた毛細血管に極度の動脈硬化が起こり、栄養が補給されず、細胞が固くなって壊死し、えそが出き穴があいてしまったのです
 しかも心臓の冠状動脈も硬化を起こして心筋硬塞の状態になっていました。砂糖の本当の怖さは、この動脈硬化と老化の促進にあるのです。

 
 私達は砂糖の取り過ぎが、血管を硬くし、年より早く老けこむことに気付かなければなりません。
 また甘味は冷やせば冷やすほど感じなくなるので、冷蔵庫で冷やすジュースや炭酸飲料の1缶、1瓶中には最低角砂糖5個分が入っている事を忘れてはなりません。
 沖縄の伝承に「白い砂糖は命を縮め、黒い砂糖は命を長らえる」とあるように、最近の研究で黒砂糖の黒色部分に黒糖オリゴと呼ばれる砂糖の解毒成分のあることが見出されています。喫茶店でコーヒーを飲まれるとき、白砂糖と褐色がかった砂糖のおかれている場合、褐色の砂糖の方が砂糖の害を防いでくれるのです。
 砂糖を摂るのに黒砂糖とか、砂糖の300倍の甘味をもつキク科のステビア葉から取れるステビオサイドや甘草や羅漢果に含まれる天然の甘味成分の利用も考えてみる必要があると思います。

 
 
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