|
 |
糖尿病は、紀元前1550年ごろに書かれた世界最古の医学書パピルス・エーベルスに、蜂蜜のように甘い尿の出る病気(ディアベテス・メリッス)と記されているほど古くからある病気です。日本でも食生活の豊かさに比例して急激に増加し、現在、患者は約690万人。予備軍まで含めると1370万人(1997年厚生省推計)にものぼります。
今回は生活習慣病のうち、この糖尿病の症状と予防改善に役立つ食物について考えてみたいと思います。
|
|
|
糖尿病は、インスリンという膵臓から出るホルモンが不足して、体内で起きる代謝異常の病気です。
血中の血糖値(ブドウ糖濃度)の上昇は糖類代謝によって起きるヒズミの一つです。健康人の空腹時の血液100ml中の血糖値は70〜110mgですが、糖尿病になると140mg以上になります。
また糖負荷試験といって、ブドウ糖を飲用して30分毎に血中の血糖値を計ると、健康人も最初は高くなりますが、2時間後には正常値の範囲にもどります。2時間後にも200mg以上であると糖尿病と考えられます。そして空腹時の血糖値が160〜170mg以上になると尿に糖が出るようになります。
症状としては、まず尿量が多くなります。健康人の尿の一日排出量は1.5リットル位ですが、糖尿病になるとその3〜5倍と多尿になり、脱水症状を起こします。そして口やのどが渇き、水分がほしくなります。この口渇、多飲、多尿が糖尿病の三大自覚症状です。また栄養分である糖が、有効に利用されませんから、疲れやすくなり、次第に痩せていきます。そのほか、傷が治りにくく、目がかすんで視力が低下する、手足がしびれるなどの症状も出てきます。糖尿病が恐いのは、合併症です。糖尿病の人の体内にはいつも糖分の高い血液が流れているため、放っておくと血管や神経が障害されます。血管障害によって動脈硬化が促進され、心筋梗塞や脳梗塞や足の指先の細胞が壊疽する糖尿病性壊疽などの引金になります。また失明をもたらす糖尿性網膜症や尿毒症を起こす糖尿性腎炎症を招きやすくなります。
糖尿病性神経障害が起こると、手足のしびれなどの知覚マヒや運動マヒなどを生じ、発汗、排尿、胃腸などの運動異常を引き起こします。
では糖尿病の起きる原因は何なのでしょうか。食物からとった澱粉などの糖質は、通常体内でブドウ糖に消化分解されて、血液中に入り、全身の細胞に運ばれ、燃料となってエネルギーが生み出されます。また、余ったブドウ糖は脂肪細胞に運ばれ、脂肪という形になって一時的に貯蔵されます。このブドウ糖が脂肪細胞に入り込むとき、その媒体として膵臓からインスリンというホルモンが必要なのです。インスリンは膵臓のランゲルハンス島のβ細胞から分泌されますが、この分泌が少なかったり、分泌されても肥満などで作用が低下していると、ブドウ糖を脂肪細胞中に取り込むことができず、血液中のブドウ糖が増えてしまいます。そして血糖値の高い状態が生じるのです。糖尿病は遺伝的要素が強く、そういう体質に過食や運動不足、肥満、ストレスの要因が加わると、発症しやすくなります。これをインスリン非依存型糖尿病といい、患者の90%以上を占めます。他にインスリン依存型糖尿病があり、インスリンを分泌する膵臓のランゲルハンス島がウイルス感染などによって分泌することができなくなり、インスリン注射をしないと生きていけなくなった型の糖尿病です。若年層に主としてみられます。
糖尿病の一般的治療法としては、食事療法と運動療法を両輪とし、その補助として血糖降下剤を使います。まず食事ですが、患者の体重や年齢、運動量などを考慮して、1日の必要カロリーを医師などと相談して算出します。事務職や家庭の主婦なら、「標準体重×25〜30」キロカロリーが目安になります。運動は摂取したカロリーを消費するだけではなく、代謝を活発にして身体機能を高めるためにも必要です。しかし過度の運動は危険で、医師の指導を受けながら無理のない範囲で行ってください。糖尿病の薬は、糖尿病を治すものではなく、血糖値をコントロールするもので、インスリンの分泌を促すスルホニールウレア剤やブドウ糖の吸収を妨げるグルコシダーゼ阻害剤などがあります。こうした薬で効果が少ない場合は注射で直接インスリンを補給するインスリン療法を行います。
食事療法では、糖質食品さえ控えていればと思われがちですが、糖質、蛋白質、脂肪の三大要素をバランスよく摂って1日のカロリーを作り出すことがもっとも大切なのです。
また甘いものに注意するだけはでなく、動脈硬化を招く動物性脂肪や塩分を控えめにする必要があります。低下した抵抗力や疲労を回復させるためビタミンやミネラルの補給も必要ですし、ブドウ糖の腸管吸収を抑制して、食後の血中の急激な血糖値上昇を抑えてくれる食物繊維を積極的に取り入れたいものです。
そして糖尿病の予防改善に役立つ食物としては、まず山芋が挙げられます。中国では長芋をスライスし乾燥したものを山薬と呼び、初期糖尿病の予防改善に、2000年も前から漢方医学の生薬として使ってきました。私と東北大学薬学部他の研究でデオスコランという山芋のネバネバ成分に血糖値を下げる働きのあることが証明されています。トロロ汁や山芋の短冊切り酢の物など食生活に取り入れたいものです。同じように糖尿病の薬として使われてきたのは朝鮮人参です。血糖値を下げ、口渇を止め、皮膚にうるおいをもたらす作用があり、パナキサンという粘液多糖成分とペプチドが有効成分です。アロエも昔から、ヨーロッパでは糖尿病の民間薬として使われてきました。皮をむいたゼリー部分に含まれるアロエボランやアロエマンナンといった粘液多糖類に血糖を下げる作用があるのです。また玉葱に含まれるグルコキニンという成分にも、血糖値を下げる作用があり、フランスでは糖尿病の民間薬として使われています。またニンニクの成分は、ビタミンB1と結びついて、糖をエネルギーに替える糖代謝を促進し、血糖のだぶつきを防いでくれます。またグァバの葉にも同様の働きがあり、糖尿病の予防に役立ちます。
また糖尿病の予防、改善には肥満の解消が必要です。これに役立つ食物としては、腸がこの過剰な糖吸収を抑え、貯った脂肪を速くエネルギーに変える大豆サポニンを多くもつユバ、高野豆腐、納豆などの大豆加工食品やインド医学で使われてきたギムネマが有効です。また貯った脂肪分解を促進するガルシニア、カルニチンや唐辛子の辛味成分カプサイシンなども役立ちます。
|
|
 |
|