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食は文化です。
その国の文化を支える基礎には、長年先祖の時代から培ってきた食文化が存在します。
私達が小料理屋さんで、お刺身を注文すると、たいてい緑の紫蘇の葉にのせられ、小菊が添えられています。鮪の赤身、鯛の白身に、緑と黄色の配色が生きて、一段と食欲がそそられます。日本料理が目で食べる料理であることを考えれば、この配色は、絶妙だといえます。
しかし、刺身に紫蘇の葉や小菊が添えられるのは、それだけの理由ではありません。紫蘇特有の匂いはペリラアルデヒドという精油成分ですが、これが素晴らしい殺菌防腐作用をもっているのです。
また菊の放つ芳香にも強い殺菌力があります。そして醤油に入れるワサビの辛味成分シニグリンも強力な殺菌作用をもちます。
私達の先祖は、大事なお客様に生の腐りやすい魚肉を食べていただくとき、ちゃんと殺菌剤入りの緑の皿の上に載せ、防腐作用をもつワサビを塗って供する生活の知恵をもっていたのです。
また色鮮やかな小菊は、殺菌力以外に眼精疲労を治す強い効用があります。そのままで苦ければ、二杯酢にしたり、天ぷらにすれば、苦みが消え結構おいしく食べられます。これが日本の食文化なのです。

食欲の減退する梅雨から夏期の食卓には大根おろしがよく出されます。大根は東洋医学で莢Bと呼ばれ、ジアスターゼ、アミラーゼ等の消化酵素と胃液の分泌を促進する辛味硫黄化合物を含み、消化剤に用いられます。
更に炎症を治す成分を含まれるので、大根を短冊状に切り、これに水飴や蜂蜜をかけ、二日間置いて出てくる甘い汁を一日二回、大さじ二杯ずつ、喉にあたるよう服用すると、しつこい咳もとめられることが出来ます。大根おろしが消化によいことをご存知の方でも、トロロ汁が消化剤であることを承知の方は少ないのではないでしょうか。山のイモには大根に負けない量のジアスターゼなどの消化酵素が含まれています。
ですから我々の先祖は消化の悪い麦飯を食べるとき、トロロ汁をかけ「麦トロ」の形で食してきたのです。山イモの乾燥物は東洋医学では山薬と呼ばれ、滋養強壮剤に用いられると共に糖尿病改善の薬として利用されています。山イモのネバネバ成分である「ジオスコラン」が過剰な血糖を低下させる作用をもち糖尿改善に役立っているのです。糖尿の心配のある方は、山イモを多食して下さい。
サクランボウも、この時期出廻っていますが、東洋では桜桃と呼び、元気をつけ、顔色を良くする強壮の薬食として美人をつくる効果
をもつとされています。
これは桜桃がビタミンA・B1・Cなどのビタミン類や、ミネラル分、甘味成分として庶糖や転化糖、酸味として疲労回復作用をもつクエン酸、酒石酸を多く含みまた利尿を促進してむくみをとるカリウム分を豊富に含む為とかんがえられます。
欧州では便秘時の通便の果物としてももちいられています。
サクラは実だけではなく、花は塩漬けにして茶の代用になり、これは二日酔いに効力を発揮します。
樹の皮は桜皮と呼び、3〜5gを煎じて下痢止めにもちいてきました。これは桜皮の中に強い殺菌力と消炎作用をもつサクラニンとかタンニンを含むからです。これを利用してエキスをブロチンという咳止めや痰切りの医薬品につかっています。
又、葉は桜餅を包んで独特な匂いと防腐効果を挙げます。これはクマリンという成分のもたらす作用です。餅といえばかしわ餅やよもぎ餅も、かしわの葉で包み、ももぎの葉の粉末を加えてつくられます。
これらの葉の香気成分の精油が強い殺菌力をもち、初夏の時季の餅菓子の保存性を高めているのです。
かしわ餅が、端午の節句に良く食べられるのは、かしわは新芽が出ないと古い葉は落ちない性質をもち、男の家系が絶えないようにとの古い時代からの縁起をかついで男の節句に食べるのです。
よもぎは止血作用・血行促進作用をもち、葉をもんで血止めに使い、裏の白い毛をかき取って、お灸のモグサに用いて血行を促進します。

私達の食生活は昭和10年代から肉食中心主義に大きく変わりました、しかし日本料理に色々な知恵を残してくれた我々の先祖は、宗教上の制約から、獣肉をほとんど摂らなかった為、肉や油の食文化は、この国には育っていません。
肉類に含まれる油や脂肪分は、空気中で酸化されやすく、過剰に酸化された過酸化脂質に容易にかわります。
この過酸化脂質が動脈硬化の最大の引き金となり、種々の成人病を促進するのです。私達はこの油の害を防ぐ何の用意もなしに、肉食中心の食生活に飛び込んでしまったのです。
昭和30年以来脳血栓症などの脳血管系の病気が、常に死亡率のベスト3の常連となり、血液と血管に関した病気が日本人の3人に1人の命が奪われるに至っています。肉や油を多く用いる中国料理は、大豆加工品や香辛料を積極的に配合し、その成分である大豆サポニンや精油成分を利用して毒消しに役立っています。それらの抗酸化力で過酸化脂質を抑制するとともに、脂肪の摂取で増える血中のコレステロールを除くという工夫がなされているのです。
西洋料理もニンニク等を肉のかくし調味に使って、血中のコレステロールの増すのを防ぎ酸化油の食害を防止しているのです。私達も肉食に平行して、大豆加工品や香辛料、ニンニク等を摂るようにしたいものです。食は文化です。 |
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